ベルナト・マルトレル《聖ゲオルギオスと竜》

ベルナト・マルトレル《聖ゲオルギオスと竜》

作品図と詳細

ベルナト・マルトレル《聖ゲオルギオスと竜》

  • タイトル:聖ゲオルギオスと竜(Saint George and the Dragon)
  • 作者:ベルナト・マルトレル(Bernat Martorell, 1390年頃 – 1452年)
  • 制作年:1434 – 1435年
  • 種類:パネル、テンペラ
  • 寸法:155.6×98.1cm
  • 所蔵:シカゴ美術館

解説

ベルナト・マルトレルは15世紀中期にバルセロナで活躍した画家。カタルーニャにおける国際ゴシック様式を表す重要な画家とされる。祭壇画やミニアチュール(彩色写本)の挿絵のほかに、彫刻や刺繍のデザインを手掛けるなど幅広く制作した。

1427年以前のマルトレルの生涯についてははっきりとしないが、1430年代初頭に制作された《聖ゲオルギオスと竜》では色彩の豊かさや構成の巧みさ、細部まで行き届いたぬかりない緻密な描写から、画家として十分に訓練され、卓越した技術を持っていたことがうかがえる。

国際ゴシック様式らしく、上品かつ装飾性の高い本作品は、カタルーニャ宮殿の礼拝堂にある聖ゲオルギオスに捧げられた祭壇画の中央に配置されたものだった。

聖ゲオルギウスは3世紀後半の人物だが、見る者が主題を理解しやすいように15世紀風の装いをしており、背後の王女もまた、毛皮が裏打ちされた豪華なローブと冠を纏っている。

聖ゲオルギオスの光輪や鎧、槍、馬具などは漆喰で立体的な厚みを出した上に金箔を貼られており、教会内のろうそくの明かりで照らされると、金がきらきらと輝くような仕掛けになっていたのだろう。竜も同様に、テンペラの顔料におそらく砂を混ぜて、表面の鱗に厚みを持たせて立体感や質感を表現するという工夫が見られる。

主題「聖ゲオルギオスと竜」について

主題の「聖ゲオルギオスと竜」の伝説の大筋は、毒を吐く悪竜に悩まされる街に偶然やってきた聖ゲオルギオスが竜を退治し、街の人々をキリスト教に改宗させるというものだ。竜とはキリスト教において蛇と同様にサタンや悪の象徴とされており、竜を退治するということはすなわち悪(異教徒)に対する善の勝利を示すメッセージとなる。

本作品の聖ゲオルギオスの鎧の胸当てや槍に巻き付いた旗に見られる白地に赤い十字は聖ゲオルギオス十字(セント・ジョージ・クロス)と呼ばれるもので、イングランドの国旗をはじめ様々な地域の旗や紋章になっている。聖ゲオルギオスは兵士の守護聖人でもある。

聖ゲオルギオスは3世紀後半のパレスチナでギリシャ系貴族のキリスト教徒の家庭に生まれローマの軍人になったとされているが、彼の生きた時代はちょうどローマ皇帝がキリスト教に対する大弾圧を行ったディオクレティアヌス帝の頃で、聖ゲオルギオスも迫害を受けて殉教したとされる。

聖ゲオルギオスの竜退治伝説が成立したのは11~12世紀頃だが、その伝説の原型はギリシア神話や様々な聖人の伝承に求めることができる。竜退治の物語は時間をかけて聖ゲオルギオスの伝説として語られるようになった。

13世紀にヤコブズ・デ・ウォラギネによってまとめられた聖人伝集である『黄金伝説』によって聖ゲオルギオスと竜の伝説は西ヨーロッパに広く普及した。この伝説は中世後期からルネサンス期にかけて非常に人気がある主題となり、文学や絵画で何度も取り上げられることになった。

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